本日の「建築意匠と歴史」は、懸造(かけづくり)、特に三仏寺投入堂についてのレクチャー。

配布資料:A3両面印刷資料2枚

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三仏寺投入堂は一度につくられたか?それとも増改築をかさねているのか?

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この問いに対して、大岡実・堀口捨己両氏の各論を紹介。
大岡は、建築する意思が捨象する要素に注目し、部分(ディテール)の建築史的分析によって、身舎と庇との建立年代が異なることを示した。
それに対照的な見解が堀口によるもので、彼の三仏寺投入堂にそそぐまなざしは、「後から取り付けた廂で、こんなにすばらしい姿になし得るとは思へない。」という言葉が示す通り、まさに美的直感によるものである。

大岡のまなざしは、ジョバンニ・モレッリのいわゆる「耳たぶ理論」でいう、耳たぶに注目することであり、それは創作意識が無意識に捨象する部分である。
堀口のまなざしは、カントの「美とは、目的なき合目的性である」ということばと同じ哲学をその根底にもっているといえる。

知的で意識的であること、そして直感的であること。この両極のまなざしを向けられうること自体が、三仏寺投入堂のおもしろさといえよう。


TA 阿部